higekikigeki200611_b.jpgわたしのスケッチブック まだ見ぬ“熊野” 

 「千年の愉楽」読み終わった時に何だかとてもいやらしい気分になった事を覚えています。難しい問題より、欲が先に私の気持ちを動かしてしまった。

とても神秘的な時空を飛び越えた世界感に魅了させられました。

 この作品は、生と性をとらえそれに対する死をまざまざと見せつけられる。その止まる事の無い永遠の繰り返しを路地の唯一の産婆であるオリュウノオバにより見守り続けられている話であり。そこには、部落民として強く生き続けていた人々が書かれています。

 部落、えた、ひにん、新平民という言葉は、学校の教科書以来聞くことのない言葉だった。現在では、差別用語として使用出来ない言葉もある。そんなことさえ知らなかった私は、打合せ後、とても大変な作品に遭遇してしまったと言葉等を必死に調べた。もちろんその言葉が装置にどう型として現れるかは別だが、その作品の時代背景や状況をしらないわけには、いかないですよね。

 基本的に勉強の大嫌いな私は、美術家がこんなに勉強の必要な職業だということを全く予想していなかった。年間に関わる作品の台本以外にその周りに付属する本を何冊も読まなければいけないのです。まあ、私の場合一夜漬けの勉強のように読んでいるので しばらく時間がたつと忘れてしまうのが現状なのですが。最近は、頭のメモリーを増設しなければと パソコンを前に「いくら払えば容量増えるかな」と独り言を言う始末です。全くもって寂しい独り言です。

 と、かなり関係ない感想が入ってしまいました。失礼。

さてデザインをする際に、現地を訪れるチャンスとお金が無かった私は、ネットでの写真集めと、本屋巡りをはじめました。

私がその時のこの作品に選んだキーワードは、 静と動 差 でした。

オリュウノオバの千年をも動かない思いと新しいところに向けて動き出す男達の勢い。差とは、人種差別的なところです。

大きい石がごろごろした写真と由緒ある神社の後ろの壮大な森から勢い良く出てくる清い滝に目がとまりました。小説を読んだ時イメージした映像に近かったのです。そしてなによりも一番イメージに合ったのが、チラシにも使われている 宮内勝さんの撮ったお墓の写真でした。

 この3つのイメージをどう組み合わせようかという試行錯誤がスタートしました。自由に組み替えられるシアタートラムという条件がこの作品にはとてもマッチしていたように思います。以外に方向性は、すんなり決める事ができました。役者には、体力的に大変な思いをさせてしまったかもしれませんが、縦にも奥にも幅のあるデザインが出来上がったように思っております。当時は、自分で言うのも恥ずかしいですが。最高!と思っていました。もちろん 周りのスタッフの皆さんのおかげでそう思うことが出来ました。心から皆様に感謝です。作品を発表して半年以上たつ今となっては、やり直したい部分が出てきていますし、反省点も続々沸き上がっていますが。もし次があるなら。。。。ニヤニヤ。

 

現在では、男女を問わず、貴賤を選ばず、全ての苦悩する人々を救済する霊地“熊野”。写真でしか知らない“熊野”と“路地”。

いつか散策してみたいと思います。その時に“熊野”から「君のデザインは、まあまあな線いってたよ」と言われたいものです。

悲劇喜劇2007年1月号